ホンダ S660の実燃費はどれくらい?走行環境やトランスミッション別の数値
ホンダS660の実燃費は、平均して1リットルあたり17キロメートルから20キロメートル前後の高い水準で推移しています。これはスポーツカーとしては極めて優秀な数値であり、軽量な車体と効率的な3気筒ターボエンジンの組み合わせが大きく貢献しています。
1. 走行シチュエーション別(市街地・郊外・高速道路)の実燃費の傾向
S660の実燃費は、走行する道路環境によって大きく変動する特性を持っています。信号待ちやストップ&ゴーの多い市街地においては、アイドリングや加速の頻度が高まるため、1リットルあたり約14キロメートルから16キロメートルまで低下する傾向があります。
これに対して、信号が少なく一定の速度を維持しやすい郊外の幹線道路では、エンジンの熱効率が最も高まる領域を使用できるため、1リットルあたり約19キロメートルから21キロメートルへと大幅に向上します。さらに、加減速がほとんど発生しない高速道路巡航においては、空気抵抗の影響を受けつつも、ギア比の最適化により1リットルあたり約20キロメートルから22キロメートルという優れた低燃費を記録することが可能です。
2. 【トランスミッション別】6MT(マニュアル)とCVT(オートマ)の実燃費比較
トランスミッションの違いによる実燃費の差は、一般的なオートマチック車とマニュアル車の関係性とは異なり、CVTモデルの方がやや優れる傾向にあります。これは、CVTがエンジンの最も効率の良い回転数を電子制御で常に維持し続けることができるためです。具体的なトランスミッション別の実燃費の目安は以下の通りです。
トランスミッション | 実燃費(平均値) |
6MT(6速マニュアル) | 17.5 km/L |
CVT(無段変速機) | 19.0 km/L |
※記載の実燃費はユーザーの声をまとめた他社サービス記載の実燃費をまとめた数値です。
マニュアルモデルはドライバーのシフトワークによって燃費が左右されやすいのに対し、CVTモデルは誰が運転しても安定して高い燃費性能を引き出せるのが特徴です。
年間1万キロ走行時のガソリン代シミュレーション
年間1万キロメートルを走行する場合のガソリン代は、1年間で約92,105円から100,000円の範囲に収まります。この計算は、レギュラーガソリンの価格を1リットルあたり175円と仮定し、それぞれのトランスミッションの平均実燃費を基に算出したものです。
トランスミッション | 年間ガソリン代(1万km走行時) |
6MTモデル(実燃費17.5km/Lで計算) | 100,000円 |
CVTモデル(実燃費19.0km/Lで計算) | 92,105円 |
日常の通勤や週末のドライブで月間約830キロメートル走行したとしても、毎月のガソリン代は約7,600円から8,300円程度に抑えられるため、普通車のスポーツカーと比較して極めて経済的であると言えます。
S660の燃料タンク容量(25L)と満タン時の航続距離の目安
S660の燃料タンク容量は25リットルとなっており、一般的な軽自動車と比較しても非常に小さく設計されています。これは、ミッドシップレイアウトを採用したことで車体中央から後方のスペースが限られていることや、徹底的な軽量化と前後重量配分の最適化を追求した結果です。
満タン時の航続距離は、平均実燃費を18.0km/Lとした場合、理論上は450キロメートルとなりますが、燃料残量警告灯が点灯するタイミングを考慮すると、実際の給油間隔は約350キロメートルから400キロメートルごとに訪れます。長距離のツーリングに出掛ける際は、早めのガソリンスタンドの確保が必要となる点が、本車種特有の運用の注意点です。
指定燃料はレギュラー?ハイオク仕様(ECUチューン等)との燃費・燃料費の違い
S660の指定燃料は、メーカー標準の状態であればレギュラーガソリンです。そのため、ハイオクガソリンを必要とする多くの登録車(普通車)スポーツカーよりも、燃料単価の面で大きな優位性を持っています。
ただし、中古車市場においては、前オーナーがエンジン制御コンピューター(ECU)を書き換えてハイオクガソリン仕様にチューニングしている車両も存在します。ハイオク仕様にすることで最高出力やレスポンスは向上しますが、燃料単価が1リットルあたり約10円高くなるため、年間1万キロメートル走行時の燃料費は約5,000円から6,000円ほど増加します。購入時には、その車両がノーマル状態であるかどうかの確認が不可欠です。
「S660は買ってはいけない」「手放した」と言われる理由と燃費・実用性のリアル
インターネット上で「S660は買ってはいけない」あるいは「早期に手放した」というネガティブな意見が見られる最大の理由は、燃費性能そのものの悪さではなく、極端に割り切った車体設計による実用性の低さにあります。日常の買い物や荷物の運搬といった利便性を期待して購入したユーザーほど、理想と現実のギャップに直面しやすい傾向があります。
燃料タンク容量の小ささと積載能力の低さによる実用性の不満
車内の積載スペースがほぼ皆無であるという点は、多くのオーナーが直面する現実的な課題です。フロントフード内に小さなユーティリティボックスが存在するものの、ここには取り外した布製ソフトトップ(ロールトップ)を収納すると他の荷物は一切入らなくなります。
助手席に人が乗る場合は、手荷物を置くスペースすら制限されるため、2人での一泊旅行であっても荷物の厳選を迫られます。この収納力の低さと、前述した燃料タンク容量の小ささに起因する給油頻度の多さが重なり、日常生活での移動手段としてストレスを感じて手放してしまうケースが少なくありません。
スポーツ走行(峠・サーキット)時の燃費悪化と維持費のギャップ
ワインディングロードやサーキットにおいてアクセル開度を高めたスポーツ走行を行うと、燃費は1リットルあたり10キロメートル未満まで急激に悪化します。これは、ターボチャージャーによる過給圧が常に高まることで、エンジンを守るために燃料を濃く噴射する補正が働くためです。
一般道の快適なドライブでは低燃費を維持できるものの、高回転を多用する本格的なスポーツ走行を趣味とする場合は、ガソリン代だけでなくタイヤやブレーキパッドといった消耗品の交換サイクルも早まるため、維持費全体の予算を高めに見積もっておく必要があります。
それでもファンを魅了するS660の圧倒的な魅力と64馬力の走行性能
数々の実用的な欠点を抱えながらも、S660が絶大な支持を集め続けているのは、軽自動車自主規制枠の最高出力である64馬力をフルに使い切る楽しさがあるからです。ドライバーの背後から聞こえるエンジンサウンドや、路面に吸い付くようなハンドリングは、他の実用車では絶対に味わえない唯一無二の価値です。
例えば、荷物は載らなくても、天気の良い休日にルーフを開け放って峠道を駆け抜ける瞬間の高揚感は、すべての不便さを払拭するほどの魅力を持っています。実用性という評価軸を捨て、純粋な「趣味の乗り物」として割り切ることができる人にとっては、これ以上なく所有欲を満たしてくれる名車です。
S660のカタログ燃費(JC08モード・WLTCモード)とグレード一覧
S660のカタログ燃費は、年式やトランスミッションの仕様によって、当時の測定基準であるJC08モード、またはより実態に近いWLTCモードで表記されています。基本となるエンジン性能は全グレードで共通であるため、数値の違いは主にトランスミッションの形式に依存します。
各グレード(α・β・モデューロXなど)の燃費スペック比較
上級グレードの「α(アルファ)」や標準グレードの「β(ベータ)」、そして専用サスペンションを備えたコンプリートカーである「Modulo X(モデューロエックス)」にいたるまで、燃費性能を決定づけるパワートレインはすべて同一のものが搭載されています。したがって、グレードごとの装備重量の僅かな差を除けば、カタログ燃費の表記は以下のトランスミッション別の数値に準拠します。
トランスミッション | JC08モード燃費 | WLTCモード燃費 |
6MTモデル | 21.2 km/L | 20.0 km/L |
CVTモデル | 24.2 km/L | 20.0 km/L |
日本の環境省や国土交通省が導入したWLTCモードにおいては、6MTとCVTがともに20.0km/Lという同一の数値を達成しており、現在の基準で見ても非常に優れた環境性能を持っていることが証明されています。
前期型・後期型(マイナーチェンジ)による燃費性能の違い
S660は2020年1月にマイナーチェンジを行い、デザインの変更や装備の充実が図られた「後期型」へと移行しましたが、この前後でエンジンの基本スペックや燃費性能に変更はありません。
唯一の違いはカタログ上の燃費表示基準であり、前期型は主に旧基準の「JC08モード」で表記されているのに対し、後期型からはより厳しい実走行に近い「WLTCモード」の表記が義務付けられた点です。中古車を探す際に表記上の数値が異なって見えたとしても、車自体の燃費効率のポテンシャルに変りはないため、年式による燃費の優劣を過度に心配する必要はありません。
S660とライバル車の燃費・維持費を徹底比較
S660の購入を検討する上で、同じ軽オープンスポーツカーであるダイハツの「コペン」や、普通車オープンスポーツの王道であるマツダの「ロードスター」は必ず比較対象となるライバルです。それぞれの燃費性能と、維持費に直結する年間ガソリン代の仕様を比較します。
ダイハツ「コペン」との実燃費・スペック比較
ダイハツコペンは、フロントにエンジンを配置して前輪を駆動するFFレイアウトを採用しており、電動開閉式ルーフ「アクティブトップ」による高い利便性が特徴のライバル車です。カタログ燃費の旧JC08モードにおけるCVT同士の比較においては、コペンが25.2km/Lを達成しており、S660の24.2km/Lを僅かに上回るなど、一部の環境下ではコペンの方が低燃費であるという結果が出ています。
車種(仕様) | カタログ燃費(WLTC) | 実燃費(平均値) | 年間ガソリン代(1万km) |
S660(CVT) | 20.0 km/L | 19.0 km/L | 92,105円(レギュラー) |
コペン(CVT) | 19.2 km/L | 17.5 km/L | 100,000円(レギュラー) |
※記載の実燃費はユーザーの声をまとめた他社サービス記載の実燃費をまとめた数値です。
※ガソリン価格は175円/Lで計算。
総合的な実燃費の平均値やWLTCモードの数値ではS660が有利ですが、市街地における実用的な扱いやすさやカタログの最大値においてはコペンが健闘しています。燃費性能でコペンにアドバンテージがあるシチュエーションを踏まえつつも、S660を選ぶ利点としては、やはりコペンにはない「ミッドシップレイアウト独特の、レーシングカーさながらのハンドリング性能」と「座席背後から直接響くエンジンサウンドの臨場感」が挙げられます。走りの純粋な楽しさを最優先する場合には、S660に大きな優位性があります。
マツダ「ロードスター」との燃費・維持費比較
マツダロードスターは、1.5リットルの自然吸気エンジンを搭載した普通車(登録車)のFRオープンスポーツカーであり、軽自動車の枠を超えたゆとりある走りが魅力です。排気量が大きいため、当然ながら燃費の絶対値やガソリン代はS660よりも高くなります。
車種(仕様) | カタログ燃費(WLTC) | 実燃費(平均値) | 年間ガソリン代(1万km) |
S660(6MT) | 20.0 km/L | 17.5 km/L | 100,000円(レギュラー) |
ロードスター(6MT) | 16.8 km/L | 14.5 km/L | 127,586円(ハイオク) |
※記載の実燃費はユーザーの声をまとめた他社サービス記載の実燃費をまとめた数値です。
※ガソリン価格はレギュラー175円/L、ハイオク185円/Lで計算。
ロードスターはハイオクガソリン指定であるため、1万キロメートル走行時のガソリン代の差額は約27,500円に達します。燃費や燃料費の安さにおいては軽自動車であるS660が圧倒的に有利ですが、ロードスターには「2人分の旅行荷物を十分に飲み込むトランクスペース」や「高速道路巡航時の圧倒的な静粛性と直進安定性」という、S660にはない優れたGT性能(長距離ツアラーとしての素質)という利点が存在します。
S660 燃費維持における今後の動向
2026年現在、自動車を取り巻くエネルギー環境や原材料価格の変動は、S660の維持費にも少なからず影響を及ぼしています。原油価格の高止まりや為替レートの変動によりガソリン価格の先行きは不透明な状況が続いており、環境負荷に応じた自動車税の増税議論など、維持費全体の負担は長期的に増加傾向にあります。また、生産終了から時間が経過したことで、タイヤの原材料費高騰に伴う交換コストの上昇や、専用純正部品の価格改定など、燃費以外の維持コストにも注視していく必要があります。
燃費や状態を重視してS660の中古車を選ぶ際のアドバイス
S660はすでに新車での購入ができないため、優良な中古車を見極めることがそのまま燃費性能の維持につながります。購入時は、極端なカスタムが施されておらず、定期的なオイル交換などのメンテナンス記録が残っているワンオーナー車を選ぶのが理想的です。
特にスポーツ走行で酷使された車両は、ピストンリングの摩耗やセンサー類の劣化により、エンジン本来の圧縮比が低下して燃費が著しく悪化している場合があります。アイドリングが安定しており、マフラーから異常な白煙が出ていないかを確認することが、好燃費の個体を引くための重要なチェックポイントです。
燃費悪化を防ぐ!S660の燃費をさらに向上させるための運転・メンテナンスのコツ
S660本来の優れた低燃費を維持し、さらに向上させるためには、日頃の運転方法と定期的なメンテナンスに細心の注意を払う必要があります。具体的には、以下の項目を実践することが効果的です。
- 定期的なエンジンオイル交換の徹底
高回転まで回るターボエンジンを搭載しているため、3,000kmから5,000km走行ごとのオイル交換が、エンジン内部のフリクション(摩擦抵抗)を低減し燃費悪化を防ぎます。 - 適正なタイヤ空気圧の維持
S660は前後でタイヤサイズが異なるため、指定空気圧を厳格に管理することが転がり抵抗を減らし、無駄な燃料消費を抑える基本となります。 - 滑らかなアクセルワークと早期のシフトアップ
6MT車の場合、必要以上に低いギアで引っ張りすぎず、街乗りでは2,500回転前後を目安に早めにシフトアップを行うことで、燃料の噴射量を最小限に抑えることができます。 - エアクリーナーエレメントの清掃・交換
吸気効率が低下すると、エンジンは必要な空気を吸い込めなくなり、燃焼効率が悪化して燃費に悪影響を与えます。定期的な点検が推奨されます。
出典・参考データ
- 本田技研工業株式会社「S660」公式製品情報・ファクトブック(燃費スペック・車両諸元)
- 国土交通省・自動車燃費性能情報(WLTCモード・JC08モード測定基準)
- 経済産業省 資源エネルギー庁(石油製品価格調査データ)
- ダイハツ工業株式会社「コペン」主要諸元表
- マツダ株式会社「ロードスター」主要諸元表



